「パイロットのリスクマネジメント」についての講演を聞いてきました。

「パイロットのリスクマネジメント」についての講演を聞いてきました。
日本航空の機長 船越篤氏の話です。簡単に比較などできませんが、航空業界の安全管理は学問として進んでおり、医療の分野より徹底されている感じがします。航空機の場合、1回のミスが奪う生命の数が多く、社会的影響が非常に大きいというか、隠しようがないということなのでしょうが、たいへん勉強になりました。

船越氏いわく『航空機事故の8割は「人間」である』とのこと。そのココロは、「たしかに事故のきっかけは、天候や機器の小さいトラブルかもしれないが、最悪の事態に至るまでに回復できるポイントはいくつもあった』と振り返られる事例がほとんどだというのです。
「人間の脳の特性として、エラーが不可避である」。イライラするし、焦るし、思いこむし…この前提にたって対策をしないといけないと。船津氏はある事故を例に挙げます。「副操縦士はエラーに気づいた。しかし、言い出せなかったために大事故に繋がった。機長の権威が強すぎ、部下が従属的な立場だったことが背景になっていた」…
その対策として「確認会話ですが…」と枕詞をつけて、質問や意見を言う。ここには「上下関係や感情を捨ててよ、怒らないで聞いてね」というサインが含まれ、乗務員にはこれが徹底されているのだそうです。
等々…船津氏の講演は約1時間。食い入るように拝聴してきました。
医学部の教育ではこの航空業界レベルのスキルを得る学問体系が備わっていません。今回のような講演を定期的に聞くのは医師個人に委ねられていますが、本来なら、医師の義務教育とし医療業界も総力をあげて安全への配慮を国民に約束をしないといけないと思いました。
私が主に扱う鼠径ヘルニアの手術はそもそも生命をかけた大手術ではありません。であれば、患者さんの気持ちとしては、何の不安もなく手術室に入って元気に帰らせてもらうのが当然のことです。この点、航空機の安全管理に似ているでしょう。怖いなーと多少思っていても、まさか自分が乗っているのが落ちることは通常ないのですから。
手術直前の検査データの確認、医療機器の動作チェック、執刀医含むスタッフの体調管理などチェック項目は膨大ですが、手を抜くことはできません。私を信じてきてくださった皆さん全員に等しく安全をお届けすることができるよう徹底していきたいと思っています。

特別講演(日本短期滞在手術研究会学術集会@沖縄)
鼠径ヘルニア治療専門サイト
ところで、帰りも飛行機だったのですが、大惨事の話をたっぷり聞かされた直後に乗るというのはガクガクブルブルでした(笑)

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